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東欧史研究会2021年度第4回例会:ワークショップ「社会主義ユーゴスラヴィアを再考する ―「グローバル化」の視点から」

12/18/2021

 
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門間卓也および山川卓が企画・報告を行った本ワークショップは、東欧史研究会第4回例会として2021年12月18日にオンラインで開催された。初めに門間が、近年のユーゴスラヴィア研究の潮流を踏まえ、グローバルな問題系に即した形でユーゴスラヴィアの特徴を再考するという開催趣旨を説明した。
 門間報告は、1971年の「クロアチアの春」と呼ばれる運動について、先行研究にみられる理解を批判したうえで、運動の歴史像を再考した。この報告では、ユーゴスラヴィアの治安機関が、外国で働く労働者への過激思想の広がりを警戒していたことに注意が促された。このような当局の関心を踏まえて、大学生を中心とする運動の当事者と、国家を統治する側には認識のずれが存在したことが指摘された。
 山川報告は、社会主義ユーゴスラヴィアでのロマ運動において、当事者が「人種」という枠組みをどのように認識していたのかを分析した。この報告では、連邦における「少数民族」のひとつとしての地位獲得や、社会経済状況の改善を目指して行われたユーゴスラヴィアにおけるロマ運動と、反人種差別運動と接続された西側諸国の運動との間の、「人種」をめぐる認識の差異が明らかにされた。
 報告後、中東欧近現代史を専門とする小澤弘明氏からコメントがあった。小澤氏のコメントでは、日本のユーゴスラヴィア研究が関心を抱いてきたトピックを振り返るとともに、ナショナリズム・エスニシティ・人種などのキータームについて、分析概念の混乱に注意が促された。また、ワークショップの副題でもある「グローバル化」や、「リベラル化」といった学術用語についても、定義をより明確にする必要性が指摘された。
 フロアからは、山川報告に対して、「ロマ」の自称に関してハンガリーの事例と比較した質問があった。また門間報告に対しては、「クロアチアの春」という(クロアチア・ナショナリズムを前提とする)呼称の再検討を含めて、1970年代という時代が世界史・ヨーロッパ史において持つ意義を踏まえて運動をとらえなおすべきではないかというコメントがあった。(宇野)

東欧史研究会2021年度第1回例会

6/12/2021

 
東欧史研究会2021年度6月例会(2021年6月12日:オンライン開催)にて、宇野が「クロアチアにおけるセルビア人内部の対立と第二次世界大戦の歴史認識(1990-1991)」という題目で報告を行った(内容は、宇野が2020年度に東京大学大学院に提出した修士論文の一部成果に基づくものである)。
 報告の目的は体制転換期におけるクロアチアのセルビア人の政治的志向を読み解く点にあった。その際、第二次世界大戦時に見られたナショナリズムの急進化を巡る「歴史の語り」を通じて民族関係が再構築される過程に分析の焦点があてられた。よく知られる通り、大戦時に枢軸国陣営の占領下に置かれたユーゴ地域では、民族解放を先導したパルチザン以外にも、ウスタシャやチェトニクといった各々クロアチア民族主義またはセルビア民族主義を掲げる勢力が台頭していた。ユーゴ紛争時にはその歴史が振り替えられると同時に民族間対立が再燃することになった。この経緯を考慮すれば、紛争へと向かう1990年前後の言説空間について精査することには大きな意義があると言えるだろう。宇野報告はその歴史的見地に即して、クロアチアのセルビア人内部の政治姿勢の多様性を抽出しながら、当時の言説空間の実態解明に取り組むものであった。
 フロアとのディスカッションに際しては多くのコメントがあがり議論が活発化した。例えばクロアチアのセルビア人の政治的立場を示すために設定された「分権派」「穏健派」といった用語について、両カテゴリーは具体的な社会階層と結びついているかという質問に対しては、前者は地方、後者は都市を支持母体とする傾向が一部見られる、という回答が寄せられた。また議論の前提となるような、先行研究を踏まえた本報告の意義の在処、現在に至るクロアチアの民族問題を巡る歴史認識の構築、クロアチアのセルビア人が政治的パフォーマンスとして歴史認識を開陳していた可能性についても質疑応答が為された。(門間)
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